大阪市中央区北浜の税理士室田です。
2026年7月6日、大手クレジットカード決済代行会社「株式会社全東信」(大阪市中央区)が大阪地方裁判所に破産を申請し、同日破産手続開始の決定を受けました。負債総額は約1,151億円にのぼり、金融機関だけでも63社が債権者に名を連ねる大型倒産です。
この事案を受け、最大の金融債権者である近畿産業信用組合(きんさん)は2026年7月16日付の「Kinsan News 号外」で、経緯の説明と財務健全性、そして取引先事業者を支援するための「特別相談窓口」の設置を発表しました。
本コラムでは、この号外の内容を整理したうえで、全東信と取引があった事業者さま(特に飲食店・小売店などキャッシュレス決済を導入していた事業者さま)が今、確認・検討すべきポイントを税理士事務所の視点から解説します。
【現地取材メモ】
本日午前、近畿産業信用組合の担当者さまが当事務所にご来訪され、本号外の内容について直接ご説明をいただきました。号外の記載内容に加え、特別相談窓口では取引店舗の窓口・渉外担当者を通じた相談を基本としつつ、本部(営業統括部第2部)でも一次的な問い合わせを受け付けているとのご案内がありました。以下、号外の記載内容を中心に整理してお伝えします。
全東信の破産で何が起きたのか
全東信は、加盟店がクレジットカードで受け取った売上代金について、カード会社からの入金を待たずに立て替え払いする決済代行サービスを展開していました。特に、銀行融資を受けにくい飲食店やラウンジなどとの取引が多かったとされています。
2026年7月6日、同社は準自己破産という形で大阪地裁に破産を申請し、即日破産手続開始の決定を受けました。東京商工リサーチの調査によると、負債総額は約1,151億6,491万円、金融債権者は63社、貸付総額は約1,130億円にのぼります。過去の粉飾決算により実態は600億円超の債務超過だった可能性も指摘されています。
取引先だった事業者にとっての最大の懸念は、次の2点に集約されます。
- 売上代金(立替金)の入金遅延・未回収:全東信を通じて受け取るはずだったカード売上代金が、破産手続きの中で予定通り入金されない可能性
- キャッシュレス決済手段の停止:全東信の決済端末・システムを利用していた場合、決済手段そのものが使えなくなる可能性
近畿産業信用組合の対応と財務状況
号外によると、近畿産業信用組合は全東信に対する融資について、全国信用組合連合会等の指導のもとで全額を貸倒引当金として計上済みとしています。そのうえで、財務基盤には揺るぎがないとして、以下の実績・計画を公表しています。
| 項目 | 2025年度実績 (2025年3月期) |
|---|---|
| 経常利益 | 209億87百万円 |
| 当期純利益 | 152億36百万円 |
| 自己資本比率 | 11.27% |
| 純資産額 | 1,688億93百万円 |
| 組合出資金額に対する全東信債権の割合 | 6.07% |
2026年度事業計画としては、全東信向け債権額の全額を貸倒引当金として計上したうえでも、2026年9月期で経常利益102億23百万円・当期純利益73億1百万円、2027年3月期で経常利益207億24百万円・当期純利益150億29百万円を見込むとしています。また2026年3月期時点の予想として、預金残高1兆7,015億90百万円、融資残高1兆2,818億31百万円という規模を維持するとしています。
自己資本比率11.27%は国内基準(4%)を大きく上回る水準であり、号外では「引き続き地域金融機関としての責務を果たす」との姿勢が示されています。
【本題】近畿産業信用組合「特別相談窓口」を徹底解説
今回の号外でもっとも実務的に重要なのが、この「特別相談窓口」です。全東信との取引があった事業者さまは、まずここを押さえておきましょう。
特別相談窓口とは
近畿産業信用組合は、全東信の破産手続開始により「売上代金の入金遅延」や「キャッシュレス決済手段の確保」等に懸念が生じる可能性のある事業者のお客さまを支援する目的で、特別相談窓口を設置しました。全東信と直接取引があった事業者だけでなく、資金繰りへの影響が不安な事業者は幅広く相談できる窓口と位置づけられています。
相談できる内容
- 資金繰りに関するご相談:入金遅延による一時的な資金ショートへの対応、つなぎ融資の可否、既存借入の返済条件の見直し(リスケジュール)に関する相談など
- キャッシュレス決済の代替手段に関するご相談:全東信の決済インフラが使えなくなった場合の、代替決済サービスの導入・切り替えに関する相談
窓口設置日・相談方法 ※近畿産業組合号外より
| 相談窓口設置日 | 2026年7月14日(火)〜 |
| 各店舗での相談 | お取引店舗の窓口、または渉外担当者へ直接ご相談ください |
| 本部窓口(電話) | 営業統括部第2部 06-6204-3132 |
お取引のある店舗が決まっている場合は、まずはその店舗の窓口または担当の渉外担当者に連絡するのが最もスムーズです。取引店舗が分からない場合や、まず概要だけ聞きたいという場合は、本部の営業統括部第2部(06-6204-3132)へ直接問い合わせる方法もあります。
相談前に準備しておきたい資料
号外には具体的な提出書類の指定はありませんが、資金繰り相談・リスケジュール相談の一般的な実務経験から、以下の資料を事前に整理しておくと相談がスムーズに進みます。
- 直近の試算表・決算書(直近2〜3期分)
- 資金繰り表(実績+今後3〜6ヶ月の見込み)
- 全東信との取引内容がわかる資料(契約書、入金明細、未収金の一覧など)
- 現在利用中の決済端末・決済サービスの契約状況が分かる資料
- 既存の借入一覧(借入先・残高・返済条件)
これらは税理士事務所側でも試算表や資金繰り表の作成をサポートできる部分です。相談前に一度、顧問税理士に声をかけていただくと、より説得力のある資料を持って窓口へ向かうことができます。
あわせて確認したい国・公的機関の支援策
近畿産業信用組合の特別相談窓口に加えて、国や政府系金融機関も全東信の破産を受けた支援策を打ち出しています。あわせて確認しておくことをおすすめします。
- 日本政策金融公庫の特別相談窓口:全国の支店で、全東信の破産手続開始により影響を受けた中小企業・小規模事業者・農林漁業者向けに融資・返済の相談を受け付け
- セーフティネット貸付:日本政策金融公庫等が実施する中小企業向け資金繰り支援制度。全東信の破産で影響を受ける事業者も対象に含める方針が示されています
- セーフティネット保証制度1号:信用保証協会が通常の保証枠とは別枠で債務保証を行い、金融機関からの借入をしやすくする制度。経済産業省が全東信の破産を受けて適用に向けた手続きを開始しています
- 経済産業省による全国相談窓口:経済産業省は2026年7月10日、全国378カ所の政府系金融機関等に特別相談窓口を設置すると発表しています
近畿産業信用組合の窓口は「取引金融機関としての個別対応」、国・政策金融公庫・信用保証協会の窓口は「制度融資・保証による資金調達支援」という役割分担になっています。両方を組み合わせて活用することで、資金繰りの選択肢を広げることができます。
税理士事務所からみた実務対応のポイント
全東信との取引があった事業者さまが今すぐ着手すべき実務対応を、税務・会計の観点から整理します。
1. 未回収金額の正確な把握
全東信経由の入金予定額のうち、いくらが未回収なのかをまず確定させます。破産管財人からの通知や、これまでの取引明細を突き合わせ、債権額を一覧化しておきましょう。この一覧は、金融機関への相談時にも、後述する貸倒処理の判断時にも必要になります。
2. 資金繰り表の作成・更新
未回収額を踏まえたうえで、今後3〜6ヶ月の資金繰り表を作成(または更新)します。入金遅延がどの程度資金繰りに影響するかを可視化することで、必要な融資額や返済条件の見直し幅を具体的に金融機関へ提示できます。
3. 貸倒損失・貸倒引当金の税務上の取り扱い
全東信への売掛債権が回収不能となった場合、法人税・所得税上の貸倒損失として損金・必要経費に算入できるかどうかは、破産手続きの進行状況によって判断が変わります。破産手続き開始決定の時点では全額を貸倒損失として計上できるとは限らないため、管財人からの配当情報を待ちながら、顧問税理士と処理のタイミングを確認することが重要です。
4. キャッシュレス決済の代替手段の検討
決済インフラが停止するリスクがある場合、早めに代替の決済代行会社・カード会社との契約を進めておくと、売上機会の損失を最小限に抑えられます。乗り換えの際は、入金サイクル(入金までの日数)や手数料率を必ず比較しましょう。
5. セーフティネット保証・貸付の活用検討
資金繰りが逼迫している場合は、近畿産業信用組合の特別相談窓口と並行して、セーフティネット保証制度1号や日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の活用を検討します。認定申請には市区町村の窓口での「セーフティネット保証認定」が必要になるケースが一般的なので、早めの準備をおすすめします。
よくある質問
Q. 近畿産業信用組合に預金していますが、組合自体の経営は大丈夫ですか?
A. 号外によれば、全東信向け債権は全額を貸倒引当金として計上済みで、保有有価証券の売却などにより、2025年度実績で自己資本比率11.27%、純資産額1,688億93百万円を確保しているとしています。2026年度についても、貸倒引当金計上後の黒字計画(2027年3月期で当期純利益150億29百万円の見込み)が示されています。最新情報は組合の公式発表でご確認ください。
Q. 相談は無料ですか?
A. 号外には相談自体の費用に関する記載はありません。一般的に金融機関の資金繰り相談窓口は無料で対応されるケースが大半ですが、正式な手数料等の有無は窓口に直接ご確認ください。
まとめ
- 全東信は2026年7月6日に破産手続開始決定を受け、負債総額は約1,151億円、金融債権者は63社
- 近畿産業信用組合は最大債権者(約219億円)だが、全額を貸倒引当金として計上済みで、財務健全性は維持されているとしている
- 取引先事業者向けに2026年7月14日(火)から「特別相談窓口」を設置。相談内容は「資金繰り」「キャッシュレス決済の代替手段」の2点
- 相談は取引店舗の窓口・渉外担当者、または本部営業統括部第2部(06-6204-3132)へ
- あわせて日本政策金融公庫のセーフティネット貸付、信用保証協会のセーフティネット保証1号も活用可能
- 未回収額の把握・資金繰り表の作成・貸倒処理のタイミング判断は、早めに顧問税理士に相談を
全東信との取引による資金繰りへの影響や、貸倒損失の税務処理でお悩みの事業者さまは、お気軽に当事務所までご相談ください。資金繰り表の作成から、セーフティネット保証の認定申請サポート、貸倒処理のタイミングのご提案まで、一貫してサポートいたします。
【本記事の情報について】
本記事は近畿産業信用組合が2026年7月16日に発行した「Kinsan News 号外」および各種報道をもとに作成しています。制度の詳細・最新の窓口対応状況は、近畿産業信用組合の公式発表、および各制度の所管機関(日本政策金融公庫・信用保証協会・経済産業省等)の公式情報を必ずご確認ください。


